OficeDepotというアメリカ系の大きな文房具屋さんで、特殊印刷をお願いするのにサービスカウンターに並んでいて、前にいたお客さんが、多分デモ行進用（行進するかは不明ですが）と思われる大きな印刷物をしてたんですね。
小さな子を1人連れた家族で、大人はメッセージ入りのTシャツをそれぞれ着てたんです。
メキシコは前大統領ロペス・オブラドールが、長年国家を挙げてメキシコ全体が腐り切った汚職体質で、歴代大統領や大臣、石油関係、教会関係などなど数えきれない汚職の一掃に業しましたが、もちろんこれまで恩恵を受けた人たちは当然よく思っていません。
今回見たデモメッセージも、教会関係が利権を奪われて抗議する（好き勝手できなくなった）感じのもので、
このOficeDepotで模造紙くらいの大きさのものを印刷サービスを使ってたんですね。
刷り上がったものを手にして、「どんな感じ？持ってみて？」「あ、いい感じじゃない？」ってやりとりをしてて。
で、私思ったんですね、
過激なデモ集団とか、なんでも、下準備があって、その期間、デザイン考えたり、コピーライティング考えたり、工作したり、印刷に行ったり、こうした方がインパクトあるんじゃない？って修正したり、確認しあったり。
文字だって、綺麗なフォント使うより、手書きで荒々しく書いたほうがメッセージ性が高くなるなとか考えたり。（私の想像）
その期間って、怒りってどこにあるのかな？って。
そんなこと考えてたら、過激なデモを見ても、準備してた姿を想像すると、なんか可愛いなってさえ思えてくる。
そんな話をメキシコ人としてたら「ナルコマンタ」の話になってね、
ナルコとはメキシコのマフィア（麻薬密売組織）の総称。そこから色々地域によってグループが分かれている。カンクンはメキシコで最大の観光地でお金が落ちるところなので他州のあちこちのマフィアが入り乱れている。
だけど、うまいことエリア分けされていて、こっちの道からこっちは⚪︎⚪︎グループ、こっちからこっちは⚪︎⚪︎グループって複雑だけど、それぞれのテリトリーは尊重されている。他の島は荒らさない。っという感じ。
で、Narcomantas（ナルコマンタ）というのは、彼らが使う脅迫的なメッセージや宣言が書かれた横断幕や布。
一般市民や政府、警察、敵対する麻薬組織に向けて、恐怖心を植え付けたり、権力や意図を誇示するために掲示されたりします。
公共の場（陸橋、学校、政府施設など）に掛けられることが多く、特に人々の目につきやすい場所に掲示され、麻薬組織が持つ力と影響力を見せつけることが目的。
もちろんメディアに取り上げられるので、心理的恐怖の拡散で社会に恐怖を広める効果があります。メキシコの新聞は過激なものや死体でも平気でトップ誌面を飾る。
というより、載せたほうが売れるので、メキシコの新聞社もこういう過激性があるほうが売れるので喜んで載せるというサイクル、、。（今は誰も新聞書いませんけどね）
だから、メキシコのお土産屋さんで割れ物の購入で新聞紙で包んでもらうと、普通に殺人とか交通事故の悲惨な記事が写真つきで載ってるので、
皆さんが想像するオシャレな英字新聞とは遥か遠いものだったりします。
で、ナルコマンタの話になり、広報担当じゃないけど、これを作るのに見せしめの死体を吊るしたり、
いかにうまく見せるか、準備段階を考えると、文字の量を考えて何メートルの布が必要か考えたり、横断幕を買いに行ったり、裁断作業や、文字もメキシコ人ほんと誤字が多いので、もしかしたら息子に頼んでるかもしれないし、オレ、字汚いからお前代わりに書いてくれよとか、ここは赤文字で書いたほうがアピールできるんじゃない？とか、誤字を丁寧に消したり、もしかしたら家の中で書いてて、その人の家の犬が横断幕踏んでインクが捩れたり、
死体吊るすのも、上で吊るす役と、下で指示する役で、「もうちょい右！」「右ってオレから見て右かよ？！お前から見て右かよ？！」とか、「もうちょい下の方が死体よく見えるってば！」
とかやってると、何事にも裏方がいたり、準備したり、マーケティングや広報、お疲れ様です。ってなりますね。
マフィアの横断幕の文字も、本当だったらパソコンで作って印刷したほうが早いはずだけど、Canvaとか使ってたり、フォントも綺麗系だったらちょっとイカすかないし、逆に恐怖文字系使っても、なんかヤラセっぽくなるし。
だったら、それより人間の少し荒々しい手書き文字で書いた方が信憑性や脅迫性、メッセージ性が強くなるからより効果的ですもんね。
そう考えると直接的・間接的な圧力をかけるための戦略的ツールの一つとして機能していて賢いなぁと思います。
うん、計算されたデザインかもしれない。
